久野マインズタワークリニック管理栄養士の山口です。
第3回栄養コラム・マグネシウムが不足するとどうなるかについてです。
マグネシウムが不足した場合には、不整脈が生じやすくなり、慢性的に不足すると虚血性心疾患、動脈硬化症などのリスクが高まります。また、吐き気、精神障害などの症状が現れたり、テタニー(筋肉の痙攣)を起こしやすくなったりします。さらに、近年、長期的なマグネシウムの不足が、骨粗鬆症、心疾患、糖尿病、高血圧などの生活習慣病のリスクを高める可能性が示唆されており、今後さらに研究が進められることが期待されます。
マグネシウムの過剰摂取の影響
マグネシウムを摂り過ぎた場合は、過剰分は尿中に排泄されるので通常の食事では過剰症になることはありません。しかし、腎機能が低下している場合には高マグネシウム血症が生じやすくなり、血圧低下、吐き気、心電図異常などの症状が現れます。また、ダイエットや便秘などに効果があるといって摂取されている「にがり」(主成分は塩化マグネシウム)やサプリメントなど、通常の食事以外でマグネシウムを過剰に摂取すると、下痢を起こすことがあります。
マグネシウムを多く含む食品
マグネシウムは、藻類、魚介類、穀類、野菜類、豆類などに多く含まれています。
一般的な食品スーパーなど身近なところで購入できる食品で、調理しやすく、日常的に摂取しやすい食品からマグネシウムを多く含む食品を表2から表6にまとめました。
マグネシウムとは生体内で約50~60%がリン酸塩や炭酸塩として骨に沈着しています。残りの約40%は筋肉や脳、神経に存在します。カリウムに次いで細胞内液に多く存在しますが、細胞外液には1%未満しか存在しません。生体内では、多くの酵素を活性化して生命維持に必要なさまざまな代謝に関与しています。
マグネシウムの吸収と働き
食品として摂取したマグネシウムの吸収は主に小腸で行われ、腎臓で排泄されます。腸管での吸収はビタミンDによって促進され、過剰のカルシウムやリンによって抑制されます。摂取量が不足すると、腎臓でのマグネシウムの再吸収が促進されたり、骨からマグネシウムが放出されたりすることで、マグネシウムの血中の濃度を一定に保っています。
マグネシウムは補酵素としてまたは活性中心として300種類以上の酵素の働きを助けていています。エネルギー産生機構に深く関わっており、栄養素の合成・分解過程のほか、遺伝情報の発現や神経伝達などにも関与しています。また、カルシウムと拮抗して筋収縮を制御したり、血管を拡張させて血圧を下げたり、血小板の凝集を抑え血栓を作りにくくしたりする作用もあります。
マグネシウムの1日の摂取基準量
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、1日のマグネシウムの推奨量を18~29歳男性では340㎎、30~64歳男性では370㎎、65~74歳男性では350㎎、75歳以上の男性では320㎎で、18~29歳女性では270㎎、30~64歳女性では290㎎、65~74歳女性では280㎎、75歳以上の女性では260㎎と設定しています(表1)。
通常の食事による過剰障害は報告されていないため、一般的な耐容上限量は設定されていませんが、サプリメントなどの通常の食品以外からの摂取量を成人で1日に350㎎(小児の場合は体重1㎏あたり5㎎)と制限しています。